Capriccioso, ma non troppo

気まぐれに、でも、ときにはちょっと真面目に。

頭の中に猫を飼い始めた

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しばらく前から、頭の中に猫を飼い始めた。

というか勝手に棲みついている。

精神は (もともと少し異常である可能性は否定できないが) 正常だ。

長いあいだ名前はなかったが、最近「マネ」という名前をつけることにした。

この猫、どこかで見たことあるなと思ったら、ルノワールが描いた、ジュリー・マネに抱かれて気持ちよさそうにしている猫にそっくりだったからだ (猫の名前じゃないじゃん)。

で、なんの話かというと、「瞑想」である。

最近は瞑想という言葉が持つ宗教的なニュアンスを嫌ってか、マインドフルネス (Mindfulness) という言葉のほうが流行っているらしい。

それで僕も興味を持ったのだが、アンディ・プディコムという元僧侶 (仏教) のイギリス人が書いた『The Headspace Guide to Meditation & Mindfulness』という本を読んだところ、さっそくやってみようということになった。

最初に始めたのは半年くらい前だったと思う。

それまではいろいろなことに不安を感じていたり、仕事のストレスを抱えていたりで、かなり精神的に不安定だった。

本に書いてあることを読んでみたら、瞑想がひとつの解決策になるかもしれないと思ったのだ。

実際やってみたら、効果はてきめんだった。

正直に言うと、不安やストレスは今でもずっとつきまとっている。

でも、あのなんとも言えない絶望的な感覚にずっと支配されるということはなくなった。

そういう感覚に陥りそうになったら、「あちらの世界」に堕ちそうな自分を客観的に把握して、引き戻せるようになったのだ。

ずっと悩まされていた不眠も、不思議なくらい、すっかり消えた。

しばらくの間はうまくいっていたのだが、年末年始の忙しさ (とその反動の堕落期間) にかまけて、瞑想の習慣はしばらく中断してしまった。

そのせいか最近ストレスが増え始め、不眠も再発しだしたので、もう一度瞑想を始めてみることにした。

瞑想というのは具体的にどうやるの? と気になる人もいるかもしれないので、前述のアンディの本で紹介されているやりかたを簡単に書いておくことにする。

「Take 10」と名付けられた、10 分で1回のセッションが終わるお手軽な方法だ。


準備

  1. 静かな場所を探して、背筋を伸ばして座る (椅子でも床でもいい)
  2. 瞑想を邪魔されないようにする (スマートフォンのアラームや通知は切っておく)
  3. タイマーを 10 分間にセットする

チェックイン

  1. 5 回深呼吸をし (鼻から息を吸い、口から吐く)、目を閉じる
  2. 身体的な感覚に集中する (椅子や床に接触している体の部分に意識を向ける、重力を感じる)
  3. 頭の先からつまさきまで全身をスキャンするように体の各部分に目を向け、リラックスしている部分や不快に感じる部分に注目する
  4. 今の気分はどうか、意識する

呼吸に集中

  1. 呼吸の感覚を最も強く感じる場所に目を向ける (鼻、のど、胸、横隔膜、おなか など)
  2. それぞれの (1 回ごとに微妙に異なる) 呼吸やそのリズムに注目する (長い、短い、深い、浅い など)
  3. 息を吸うときに 1、吐くときに 2、のように、10 まで数える
  4. 10 まで数えたら 1 からやりなおす (これを何度も繰り返す)

元の世界 (日常) へ戻る

  1. 呼吸への集中を解いて、自分の心 (意識) を好きなようにさせる
  2. 体に意識を戻す (椅子や床と接触している部分に注目)
  3. ゆっくりと目を開ける

これが、やってみると結構難しいのだ。

呼吸に集中するといっても、呼吸をコントロールしようとしてはいけない。

呼吸の仕方は体が覚えているから、それを観察する、ということらしい。

でも、呼吸に集中しすぎると呼吸の仕方自体を変えてしまうという観測者問題みたいなことが起こってしまう。

かといって、呼吸に集中できないと、次から次にいろんな考えが頭に浮かんでくる。

瞑想にはいろいろな方法があるが、いずれもその要点は、考えがぐるぐる回らないように意識の焦点を合わせる対象を設定することであるらしい。

その対象はろうそくのゆらめく炎であったり、声を出して唱えるお経であったりすることもある。

呼吸はいつでもどこでも使えるという点で便利なのでおすすめ、ということだそうだ。

そんなわけで、集中しすぎてもいけないし、注意がそらされてもいけない、絶妙なバランスを保つ必要がある。

うまく呼吸に意識を集中できないと、いろんな思考が目まぐるしく生まれてくる。

心を鎮めるために瞑想をしようと思ったのに、自分の心が全然落ち着きがないということをイヤというほど思い知らされるのだ。

アンディによると、これはごく普通のことらしい。

生まれてくる思考をむりやり止めようとしてはいけない。

抵抗すると、かえって新しい思考を生み出してしまう。

思考が生まれては消えていくのをただ眺めていればいい。

これも言うは易しだが、実際にそうするのは難しい。

興味を惹かれるような思考が浮かんでくると、もっと深入りしたくなる。

実はこれ、すごいアイディアなのではないか、などと思って紙に書き留めたくなってしまう (もしかしたら、実際にそうしたほうがいいのかもしれない、とちょっと思う)。

そこで、猫の登場である。

思考の渦に飲み込まれそうになっているときに、突然、声が聞こえる。

「何をそんなに焦ってるニャ?」

「落ち着くニャ。」

「別にそんなことは大したことじゃないニャ。」

なぜそんなことを思いついたのかはわからないが、そんなことをしゃべる猫を自然と想像していた。

猫は無心で「今」を生きている。

過去に対する後悔や未来に対する不安なんて持っていないのだろう。

そんな猫から学ぶことは多い。

もちろん本人 (猫) たちは何も考えていないのだろうが、過去や未来に囚われて大事な現在を見失い、せわしなく生きている人間たちを見て笑っているのではないか。

ときどきそう思うことがある。

そんなわけで、(たまに) 大切なことを教えてくれる (かもしれない) 猫さんには、頭の片隅にいてもらうことにした。

今では瞑想をするときに頭の右上あたりにすっと現れて、気持ちよさそうに眠っている。ジュリー・マネに抱かれているときのあの表情で。

心が動揺すると、マネ (空想上の猫の名前です。) が起きてしまう。

そう考えると、いつもより心が少しだけ落ち着くような気がする。


アンディの本とアプリについて


僕が読んだ本は『The Headspace Guide to Meditation & Mindfulness』(Andy Puddicombe)。

『からっぽ! 10 分間瞑想が忙しいココロを楽にする』というタイトルで邦訳も出ている。

この邦訳本では参照されている原著のタイトルが『Get Some Headspace』となっているが、同じもののようだ (Amazon ではどちらの英語タイトルで検索しても同じ表紙の本が出てくる)。

Kindle のサンプルをダウンロードして最初のほうのページを見てみたが、英語のものと対応していた。


アプリ

アンディが作っているアプリもある。

音声ガイド (英語のみ) で瞑想をサポートしてくれるアプリだ。

『Headspace』という名前で、iOS でも Android でも利用できる。

有料アプリだが、初心者向けの最初のレッスンのいくつかは無料で試すことができる。

アンディが肉声でガイドしてくれるのだが、イギリス英語訛り (?) なのか結構聞き取りにくい。

女性の声のバージョンに切り替えることもできて、英語がそんなに得意でない人にはそっちのほうが聞き取りやすくておすすめ。

環境音 (波の音、焚き火の音など) とちょっとした「お話」で睡眠をサポートしてくれる機能もあって、睡眠に悩んでいる人には特におすすめしたい。

眠りにつくのをサポートするだけなので、あまり英語がわからなくても問題ない。

むしろ英語を聞くと眠くなるという人のほうが効き目があるかもしれない。

Cat Marina という猫がたくさん出てくるストーリーもある。

公式サイトへのリンクを貼っておくので興味のある人は試してみてほしい。

https://www.headspace.com/headspace-meditation-app


自己管理能力「レベル1」な人のためのプチ・アプリ集

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